自己資金の金額や調達の内訳が創業融資の審査に大きく影響してくる

こんにちは。

Lib税理士事務所、代表の上田洋平です。

今回のお役立ちブログのテーマは、「創業融資を受けるために必要な自己資金の考え方」についてご紹介します。

■創業融資の審査が厳しい理由とは

事業資金よりも創業資金の調達のほうが難易度は高いです。
決算書がない一からスタートの状況で審査を受けるわけですから、金融機関から厳しい目でチェックされるのは当然です。
キャッシングなどの多目的融資と比べて高額の借り入れが必要になりますので、審査はより厳格になると考えてください。
自己資金がゼロの状態で事業を始めようと思っても、審査で簡単に却下されることが多いです。
創業資金をすべて自己資金で調達するのは大変ですし、それをすればビジネスチャンスを逃すことになりかねません。
金融機関は申込者の本気度をチェックしており、自己資金が大きいほど高評価をしてくれます。
単純に金融機関側が貸し出しする金額が少なくなることも一因ですが、申込者の本気度が垣間見えるからです。
たとえば自己資金100万円よりも500万円のほうが事業に対する本気度が見えてくるでしょう。
資金をまったくの貯められていない状態であれば、お金の管理が下手だと思われかねません。
事業運営と家計管理は共通点が多く、家計管理をしっかりと行えない人が事業で健全なキャッシュフローを維持することは困難です。

■自己資金の金額によって借り入れできる金額は変わる

創業融資で調達できる金額は、多くて自己資金の3倍と考えておくと良いでしょう。
たとえば自己資金が100万円で、300万円の借り入れができれば大成功というわけです。
実際には200万円未満の場合も多々ありますので、いくら借り入れができるかは金融機関の裁量によります。
創業時のスタートアップでは、いかに順調なスタートを切るかがポイントです。
商品・サービスを知ってもらうためには宣伝広告が必須となりますが、それには多額の資金が必要になるでしょう。
これらの資金をすべて融資で賄うのは難しいため、自己資金はなるべく多く用意しておく必要があります。
自己資金不足によって宣伝広告費を抑えれば、スタートダッシュで不利になってしまいます。
どんなに優れた商品を開発しても、それを知ってもらわないことには顧客は付きません。
多くの自己資金を用意できれば、それに比例するように融資を受けられる金額は大きくなり、宣伝広告に多くの費用をかけられるようになります。
自己資金は毎月コツコツと積み立てて確保していくのがベストです。
親から出してもらった場合も自己資金として認められる場合がありますが、それを証明する過程が必要です。

■自己資金は借入金で用意してはいけない

創業融資の自己資金を確保するために、キャッシングから借り入れする人がいます。
ただ借入金から自己資金を捻出した場合、借入金を返済していかなくてはなりません。
キャッシングなどの高金利ローンから借り入れしている状況では、金銭的にひっ迫していると判断されがちです。
同様に友人・知人から借り入れした場合においても、自己資金として認めてもらえない可能性が高いです。
親からの借り入れに関しては認めてもらえるケースがありますが、これは金融機関によって判断が異なります。
借金で自己資金を用意し、その自己資金をもとにして創業融資を受けると、事業資金をすべて借金で用意することになるでしょう。
借金には利息が発生しますので、返済に追われてしまうと事業運営に支障が出てきます。
利益を上げるためではなく、借金返済のために事業をするようでは本末転倒です。
特にキャッシングなどの多目的融資では、10%を大きく超える年利が設定されることが多く、返済が重荷になって事業運営の停滞を招くことがあります。

■資産に余裕があれば創業融資を受けやすい

創業融資の審査では家計の状況をチェックされることがあります。
たとえば家計の状況が安定しており、毎月黒字になっている、まとまった貯蓄がある、といった状態だと審査でプラス評価になることが多いです。
株式や仮想通貨などの資産は、保有しているだけでプラス評価になります。
いざとなれば現金化できる資産を有していることは、信用力のアップにつながります。
事業において大切なのはキャッシュフローの安定にあり、堅実運営をする意味でも安定した黒字化が求められるのです。
なぜ資産が信用力につながるかといえば、れっきとした証拠になるからです。
毎月コツコツと積み立てている定期預金、財形貯蓄なども高評価される要因となります。
出所を証明できないお金に関しては、見せ金と判断されることが多いです。
預貯金で毎月積み立てて100万円を用意する状況とローンから借りて同額を用意する状況では、前者のほうが圧倒的に有利になります。
ローンで現金を調達しても通帳に履歴は残らず、金融機関からどうやって用意したお金なのか説明を求められることになります。
借金をして自己資金を用意しようとしても、結果的にバレることになるのです。

■安全に自己資金を用意するために

自己資金は計画的にコツコツと積み立てるのがベストですが、親や兄弟からの贈与で調達しても認めてもらえる場合はあります。
ただ贈与契約書を用意する必要がありますし、贈与者の経済基盤が安定していることも求められます。
たとえば親から自己資金を贈与してもらっても、親の預貯金が激減して生活基盤に影響を与えるような状況にあるなら、創業融資を受けられない可能性があるわけです。
退職金に関してはまだ支給されていない段階であっても、将来的に支給を受けられる旨を明確にすれば審査でプラス評価になります。
ほかにも不動産を売却して自己資金を用意するなど、自己資金を用意する方法はいくつもあるのです。
なお事業の設備資金として投入した資金に関しても、みなし自己資金として認めてもらえる場合があります。
たとえば先行設備として200万円を投入した場合、その一部を自己資金として判断してもらえる可能性があるのです。
自己資金が多ければ多いほど創業融資を受けるうえで有利になりますが、自己資金率が低くても融資を受けている事業者はいます。
シンプルに言えばお金に強いことを証明できれば、審査で有利になるわけです。
前職とのつながりで大勢の顧客獲得が見込める、営業マンとして優れた実績を残している、将来性のあるビジネスであることをアピールする、事業計画書によるシミュレーションで優れた利益率を提示する、などがあります。

■創業融資を受けないほうが良い?

創業融資に対してネガティブな印象を持っている人は少なくありません。
借金することに変わりはないので、悪いことだと認識している人は少なからずいます。
しかし事業資金を多く確保して事業をスタートさせたほうが、短期間で成功を掴めるというメリットがあるのです。
もちろん事業で確実に成功するという保証はありませんが、成功できる確率が上がることに意味があります。
日本政策金融公庫の融資、信用保証協会を介した金融機関からの融資などは、非常に低利率に抑えられています。
ビジネスを早く軌道に乗せることができれば、借金の元金と利息の支払いをしても、十分なほどに利益を得られるでしょう。
ただし高金利の融資を利用してしまうと、利息が利益を超えてしまう可能性があります。
それゆえキャッシングなどの高金利ローンで事業資金を調達するのは得策ではないのです。
結論として低金利の創業融資であれば利用するメリットが大きく、高金利のビジネスローンやキャッシングなどを利用する場合はリスクがつきまとうと考えてください。