倒産防止共済で中小企業の連鎖倒産を防ぎたい

こんにちは。

Lib税理士事務所、代表の上田洋平です。

今回のお役立ちブログのテーマは、「倒産防止共済」についてご紹介します。

■中小企業倒産防止共済の目的と歴史

中小企業倒産防止共済法に基づく共済制度で、中小企業の取引先が倒産したことによる連鎖倒産を防ぐことを目的に昭和53年4月から始まり、現在では経営セーフティ共済と名称が変更されています。
昭和40年代の後半から景気後退が起こり、中小企業の倒産件数が増大した時期がありました。
中小企業においては取引先数が限定されるうえ、取引先の財務情報なども入手が難しいことから、取引先が手形の不渡りなどを出し、突如として倒産し、連鎖倒産を引き起こす事例が少なくありませんでした。
我が国では中小企業の割合が99.7%を占めており、従業員数でも大きな比重を有しています。
そのため、日本において中小企業の経営の安定を図ることは景気対策としてはもちろん、我が国の経済活動の健全な発展と失業などの社会問題が深刻化することを防ぎ、雇用の維持を図るうえで不可欠と判断されました。
そこで、国が全額出資の独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する、中小企業の相互扶助の仕組みができ上がったのです。
取引先が倒産した場合には、積み立てた掛金総額の10倍の範囲内かつ最高8,000万円のうち、回収困難となた売掛債権などの被害額において共済金の貸付が受けられます。
中小企業倒産防止共済の創設以来、経済状況や社会環境の変化に伴い、貸付限度額や掛金月額上限の引上げがなされ、掛金納付期間の短縮がなされたほか、一時貸付金貸付制度や早期償還手当金が新たに創設されたほか、倒産とみなす共済事由の拡大などが行われてきました。

■中小企業倒産防止共済のメリット

中小企業倒産防止共済に加入するメリットは大きく5つあります。
第一に取引先が倒産した場合、すぐに借りることができます。
取引先が倒産して売掛金などの回収が困難になった場合、倒産した取引先との取引の確認が済み次第、すぐに借り入れが可能です。
第二に借り入れは無利子なので、利息を気にせず安心して借り入れができます。
第三に無担保・無保証人で借りられるので、保証が受けにくい中小企業でも安心で、融資までがスムーズです。
第四に掛金は中小企業の場合は損金に、個人事業主又は必要経費ので節税対策にもなります。
第五に共済を止めて解約する場合には、解約手当金を受け取れます。
掛金を12ヶ月以上納めていれば、自己都合の解約であっても掛金総額の8割以上が戻り、40ヶ月以上納めていると、それまでに納めた掛金全額が戻るのも安心です。

■加入資格について

中小企業倒産防止共済に加入できるのは、引き続き1年以上事業を行っている中小企業であり、業種などによって以下の要件を満たす企業です。
製造業、建設業、運輸業等の場合は、資本金額3億円以下又は従業員数300人以下、卸売業の場合は資本金額1億円以下又は100人以下、サービス業の場合は資本金額5,000万円以下又は100人以下の規模である中小企業に限定されます。
なお、中小企業倒産防止共済は取引先の倒産により生じた回収困難な売掛金債権等に対して貸付が受けられる制度であるため、一般消費者を取引先とする中小企業や金融業や不動産などで売掛金債権等が生じない業種は、貸付の対象とならない場合があるので注意が必要です。

■加入申込等の手続きについて

加入申込の手続きは最寄りの商工会や商工会議所又は金融機関等で行っており、加入申込時に申込者が反社会的勢力に該当せず、それに類する行為を現在かつ将来にわたり行わないことを申告しなくてはなりません。
なお、中小企業倒産防止共済の相談や問い合わせは、制度の運営主体である独立行政法人中小企業基盤整備機構に行いましょう。

■掛金について

掛金月額は5,000円から200,000円までの範囲で、5,000円単位で自由に設定することができます。
また、1年以内の前納もでき、ひと月あたり掛金月額の1,000分の0.9の前納減額金が控除されるので、お得に積み立てができます。
掛金総額の積立限度額は800万円で、その10倍かつ被害額の範囲で貸付が受けられる仕組みです。
掛金は必要に応じて増額や減額もできます。
全額が損金に落とせるので、利益が上がっているときなどは増額して節税対策にも役立てられます。
毎月の掛金は預金口座による振替となり、振替日は毎月27日(27日が休日の場合は翌営業日)です。

■共済金の貸付の条件

共済金を借り入れる条件として、加入後6ヶ月以上を経過していることが必要です。
そのうえで、取引先が倒産したで売掛金債権などの回収が困難になって被害額が発生した場合に借り入れができます。
共済金の借り入れの限度額は被害額と掛金総額の10倍に相当する額のいずれか少ない額で、原則として50万円から最大8,000万円の範囲の5万円単位で融資が受けられます。
借り入れの対象となる被害額とは、回収が困難になった売掛金債権と前渡金返還請求権のことです。
そのため、取引先への貸付金や融通手形、不動産賃貸料などは対象となりません。
なお、倒産した取引先に対する買掛金などの債務がある場合は被害額と相殺されるので注意しましょう。
また、取引期間が1年以上あり、売上高の20%以上を占める主要取引先が倒産した場合は、回収困難となった売掛金債権等の額に一定金額が加算されます。
主要取引先の倒産は大きな打撃となり、自社の存続も怪しくなるため、多めに借りられるのは助かります。
返還期間は貸付金額に応じて5年~7年、据え置き期間が6ヶ月も受けられ、借り入れた元金を毎月均等償還で返済する仕組みです。
共済金の貸付を受けた場合、共済金貸付額の10分の1に相当する掛金の権利が消滅しますので注意しましょう。

■中小企業倒産防止共済における「倒産」とは

貸付の条件となる取引先の倒産とは、どのようなケースが含まれるかというと、大きく7つのパターンがあります。
第一に破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始、特別清算開始の申し立てがなされるなど、法的整理が挙げられます。
倒産日は法的整理の申し立てがされた日です。
第二に手形交換所に参加する金融機関に取引停止処分を受けたことで、倒産日は取引停止処分の日です。
第三にでんさいネット(株式会社全銀電子債権ネットワーク)に参加する金融機関により取引停止処分を受けることで、倒産日は取引停止処分の日となります。
第四に私的整理も該当し、債務整理の委託を受けた弁護士又は認定司法書士が共済契約者に対し支払いを停止する旨の通知がされた場合は、通知がなされた日が倒産日となります。
第五に甚大な災害が発生したことで、手形や小切手等が災害による不渡りとなったことで、倒産日は当該手形や小切手の手形交換日又は呈示日です。
第六に甚大な災害の発生によって、でんさいが災害による支払不能となることで、倒産日はでんさいネットの支払期日です。
第七として、特定非常災害による支払不能も該当します。
政府が「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」にもとづいて指定した大規模な災害によって、代表者が死亡した場合などに弁護士等によって共済契約者に対して支払いを停止する旨の通知がされた場合、通知がされた日が倒産日となります。
なお、倒産日から6ヶ月を経過した場合には共済金の借入手続ができなくなるので、気を付けましょう。
また、取引先が夜逃げした場合や内整理をした場合は倒産には該当せず、貸付を受けることはできません。