非営利型一般社団法人の概要と税制や届け出などの特徴

こんにちは。

Lib税理士事務所、代表の上田洋平です。

今回のお役立ちブログのテーマは、「非営利型一般社団法人の概要と税制や届け出などの特徴」についてご紹介します。

■公益社団法人と非営利型一般社団法人との違い

一般社団法人のうち、公益目的事業を行うことを主たる目的とするなど、一定の基準に適合し、行政庁から公益認定を受けと公益社団法人となることができます。
ここで、公益目的事業とは学術、技芸、慈善その他ほかの公益に関することを目的にする事業で、公益法人認定法の別表各号に掲げる種類の事業に該当し、かつ、不特定かつ多数の利益の増進に寄与するものでなければなりません。
これに対して公益認定を受けていない一般社団法人のうち、非営利性が徹底された法人の要件、又は共益的活動を目的とする法人の要件に該当する場合は、特段の手続きを踏むことなく非営利型一般社団法人となります。
なお、以下に定める要件のうち、1つでも該当しなくなると、特段の手続きを踏むことなく普通法人となるため注意が必要です。

■非営利性が徹底された法人の要件

第一に、剰余金の分配を行わないことを定款に定めることが必要です。
第二に解散するときには、残余財産を国又は地方公共団体又は一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めなくてはなりません。
すなわち、組織の会員間で分け与えることは認められません。
第三に第一、第二の要件を定めた定款に違反する行為をすることや行うことを決定することもNGです。
第四に各理事において、理事と理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下にしなくてはなりません。

■共益的活動を目的とする法人の要件

第一に会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的することが必要です。
第二に定款等に会費の定めをしておかなくてはなりません。
第三に主たる事業として収益事業を行ってはなりません。
第四に定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定めることもNGとなります。
第五に解散した際は、残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めてはいけません。
第六に各理事において理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であることが求められます。
要件の第一から第六の要件に該当する期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定することや与えてはなりません。

■非営利型一般社団法人とNPO法人との違い

非営利型一般社団法人もNPO法人も営利を目的としない点は同じですが、NPO法人は不特定多数の利益のために、法に規定されている20の活動分野の範囲で事業を行わなくてはなりません。
NPO法人は都道府県や市町村といった所轄庁の認証を受けないと設立ができず、設立後も所轄庁による監督を受けることになります。
これに対して、非営利型一般社団法人は非営利性が徹底された法人の要件又は共益的活動を目的とする法人の要件を満たせば、特段の手続きを踏むことなく非営利型一般社団法人となる点で大きく異なります。

■非営利型一般社団法人と法人税について

平成20年12月1日から新たな公益法人制度における一般社団法人・一般財団法人に対する法人税の取扱が施行されました。
新たな公益法人制度の目的は従来の公益法人制度に見られた諸問題に対応し、民間の非営利部門における活動の健全な発展を促進することです。
従来の主務官庁による公益法人の設立許可制度を改正し、一般社団法人や一般財団法人を登記のみで設立できる制度が新たに創設されました。
また、そのうち公益目的事業を行うことを主たる目的とする法人については、民間有識者によって構成される委員会の意見にもとづくことで、公益法人に認定する制度が創設されています。
新たな公益法人制度のもとにおける法人税の取り扱いは以下の通りです。
まず、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律にもとづき、公益認定を受けた公益社団法人・公益財団法人は公益法人等として取り扱われます。
この場合は、法人税法上の収益事業から生じた所得が課税対象です。
公益目的事業は収益事業から除かれているので、公益目的事業から生じた所得は課税対象にはなりません。
第二に公益法人認定法にもとづく公益認定を受けていない一般社団法人・一般財団法人で、法人税法上の非営利型法人の要件を満たす非営利型法人については、公益法人等として取り扱われ、収益事業を行った場合の収益事業から生じた所得が課税対象となります。
第三として非営利型法人以外の法人は普通法人として取り扱われ、すべての所得が課税対象となります。
つまり、非営利型一般社団法人の場合は収益事業を行うと、その収益から生じた所得に課税されるということです。

■損益計算書等の提出制度

公益法人である公益社団法人・公益財団法人と年間の収入金額の合計額が 8,000 万円を超える非営利型一般社団法人については、収益事業を行っていることにより法人税の確定申告書を提出する場合を除いて、原則として事業年度終了の日の翌日から4ヶ月以内に、その事業年度における損益計算書又は収支計算書を、主たる事務所の所在地にある所轄税務署長に提出しなければなりません。

■法律で定められた届け出の要件

非営利型一般社団法人は法律で定められた届け出の要件となる事実等が生じた際には、各種届出書を納税地の所轄税務署長に、定められた提出期限までに提出することが必要です。
まず、従業員等に対する給与等の支払いを開始するときは給与支払事務所等の開設届出書を提出しなくてはなりません。
次に行政庁から公益法人認定法の公益認定を受けたとき、又は公益認定を取り消されたときは異動届出書の提出が必要です。
非営利型一般社団法人のうち、収益事業を行っていない法人が非営利型法人以外の法人となったときは普通法人又は協同組合等となった旨の届出書の提出が求められます。

■収益事業を始めるとき

非営利型一般社団法人が収益事業を新たに開始するときには、各種届出書を納税地の所轄税務署長に対して、定められた提出期限までに提出しなくてはなりません。
収益事業を開始したときは収益事業開始届出書を提出します。
収益事業を廃止したときには収益事業廃止届出書の提出が必要です。
また、非営利型法人で収益事業を行っているものが非営利型法人以外の法人となったときは異動届出書の提出が求められます。

■収益事業とは

法人税法上の課税対象となる事業を収益事業と呼び、物品販売業や飲食店業、製造業をはじめ、不動産販売業や不動産貸付業、物品貸付業、金銭貸付業、倉庫業、通信業、運送業など34種類の事業が収益事業として定められています。
簡単にいうと、法人の収入源が会費や寄付金のみでない限り、収益事業として課税されるのが通常です。
ただし、1日限りといった場合を除き、継続して事業場を設けて行われるものが収益事業にあたります。
また、34種類に該当する事業であっても、 身体障害者及び生活保護者などが事業に従事する者の総数の2分の1以上を占め、かつ、その事業がそれらの生活の保護に寄与しているものについては収益事業にはあたりません。
この点、収益事業かどうかの判断は難しく、一見して収益事業に当てはまらないような事業であっても税務署から収益事業と認定され、課税対象となることがあります。
課税をされたくないと考える場合には、なんらかの事業を始める前に管轄の税務署に確認し、収益事業にあたるのか否かを確認しておきましょう。
非営利型一般社団法人が非営利型法人以外の法人に該当することになった場合には、過去の収益事業以外の事業から生じた所得金額の累積額、又は欠損金額の累積額を益金の額又は損金の額に算入しなくてはなりません。