法人設立後の社会保険加入は年金事務所で!必要な手続きと書類について解説

こんにちは。

Lib税理士事務所、代表の上田洋平です。

今回のお役立ちブログのテーマは、「法人設立後に年金事務所で必要な手続き」についてご紹介します。

■社会保険の種類や手続きを理解

会社設立後、税務署や労働基準監督署などに必要な書類を提出しますが、年金事務所もその一つです。
年金事務所での手続きの目的は、社会保険の加入になりますが、どんな社会保険に加入する必要があるのでしょうか。
ここでは、年金事務所で加入手続する社会保険の種類から、必要な手続きと書類について、わかりやすく説明します。

■年金事務所で加入手続が必要な社会保険

社会保険は、国民や労働者に一定の生活基準を保障するための制度です。
社会保険には保障する目的によっていくつか種類があり、会社を設立して加入する必要のあるものは、「健康保険」「厚生年金保険」「労災保険」「雇用保険」の4つになります。

・健康保険

健康保険とは、ケガや病気に備え加入する保険制度で、加入すると健康保険証が発行されます。
診察や入院、手術などの治療で、医療機関で治療を受けた際、健康保険証を提示すると、医療費を3割負担で済むなど、医療費の軽減が可能になるのです。
健康保険の加入対象となるのは、「常時雇用者」で、役員や正社員がそれにあたります。
ただし、パートやアルバイトでも、条件を満たせば健康保険に加入できます。

・厚生年金保険

厚生年金保険は、会社で加入する主な社会保険の一つです。
厚生年金保険に加入する条件は、健康保険とほぼ同じになります。
パートやアルバイトは、原則として対象外になりますが、1週間の労働時間と、1ヶ月の勤務日数が正社員の4分の3以上であれば、加入できるなど例外があります。

・雇用保険

従業員が失業したり、再就職のために教育訓練を受けたりする際、一定の給付金が受けられる制度です。
雇用保険の加入は、従業員を1名以上雇った時点で義務づけられます。
従業員は、正社員をはじめパートやアルバイトが含まれます。

・労災保険

労災保険は、従業員が労働中(通勤も含む)にケガや病気に見舞われたときに、補償金を支払う制度です。
雇用保険と同じく、パートやアルバイトを含む「労働者」全員が加入対象になります。
ただし役員は「労働者」とみなされないため、労災保険に加入することはできません。
上記4種類の保険は、会社設立後速やかに加入する必要があります。
このうち雇用保険と労災保険は、労働基準監督署と公共職業安定所(ハローワーク)で加入手続をします。
年金事務所で受け付けているのは、健康保険と厚生年金保険になるのです。
雇用保険と労災保険は、従業員がいなければ加入手続は必要ありませんが、健康保険と厚生年金保険は、従業員がいなくても加入が義務づけられています。
社長1人といっても、会社から給与を受ける身になりますので、健康保険と厚生年金保険の加入義務が発生します。

■年金事務所での手続きについて

手続きの前に、健康保険と厚生年金に加入する雇用者について、加入条件と照らし合わせながら明確にすることから始めましょう。
会社で健康保険と厚生年金保険に加入するための手続きは、会社の所在地を管轄する年金事務所で行います。
ここで言う「会社の所在地」は、登記した会社の住所になるのです。
管轄の年金事務所は、日本年金機構のホームページで検索できます。
加入手続きには、指定された書類と添付書類が必要になります。
何が必要になるのか、年金事務所に問い合わせ、確認してから作業に取りかかることがおすすめです。
書類はダウンロード又は年金事務所の窓口で手に入ります。
申請に必要な添付書類は複数あり、各添付書類は入手方法が異なります。
中には取得まで時間がかかる場合もありますので、計画を立て、漏れがないように作業を進めていくことがポイントです。
提出方法は、窓口やオンライン、郵送など複数あります。
提出する書類は1部ですが、2部作成することがおすすめです。
窓口で2部提出すると、控えの1部は押印して返してもらえます。

■年金事務所に提出する書類リスト

年金事務所に提出する書類は複数ありますが、必須のものと必要であれば届け出しなくてはならないものがあります。
作成の際提出期限・必要な添付書類など確認しながら、慎重に進めることがポイントです。

・健康保険・厚生年金保険新規適用届

健康保険と厚生年金保険の、新規適用事業所であることを年金事務所に知らせることを目的とした書類です。
健康保険と厚生年金保険は、会社を設立すると加入する必要がありますが、常時雇用者が5人以上いる個人事務所も、加入義務が発生します。
健康保険・厚生年金保険新規適用届の記入方法がわからない場合は、記入例を参考したり、窓口で聞いたりすることをおすすめします。
提出には、添付書類がたくさんありますので、漏れがないよう注意しましょう。
必要となる添付書類は、「登記簿謄本」「事業所の賃貸契約書(コピー)」「賃金台帳」「労働者名簿」「出勤簿(タイムカードも可)」などです。
健康保険・厚生年金保険新規適用届の提出期限は、会社設立日から5日以内です。
ただし、登記簿謄本が取得できていない場合は、5日以上過ぎても問題ありません。
そのほかの理由で5日以内に提出できなくても、ペナルティが課されるわけではありませんが、速やかに届け出るのが望ましい書類です。

・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

健康保険・厚生年金保険新規適用届書とともに提出する書類になります。
健康保険・厚生年金保険の被保険者(加入者)は、届け出が義務づけられていますので、10名の被保険者がいる場合は10名分の取得届を作成するという風に、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届は、被保険者全員分提出します。
添付書類として、身分証明書が必要になることもあるのです。
「健康保険被扶養者届」は、扶養者がいる場合添付します。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届の提出期限は、会社設立日から5日以内です。

・健康保険被扶養者(異動)届

健康保険被扶養者(異動)届は、被保険者が扶養している家族を、被扶養者とする場合や被扶養者が異動した場合などに提出する書類になります。
書類の提出期限は、異動があった日から5日以内です。
通常健康保険・厚生年金保険新規適用届と健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届とともに、セットで届け出ます。
マイナンバーを記入していれば、届け出に必要な添付書類は、基本的に必要ありません。
そうでない場合は、戸籍謄本(又は戸籍抄本)のほかに、被扶養者の収入状況によって異なりますので、給与明細書や退職証明書など、必要となる書類について、事前に確認することが望まれます。

・国民年金第3号被保険者資格取得届書

会社員など、厚生年金保険に加入した人は「第2号被保険者」に分類されます。
「第3号被保険者」とは、満20歳から60歳の、第2号被保険者に扶養されている人のことを言うのです。
国民年金第3号被保険者資格取得届書は、第3号被保険者について年金事務所に届け出る書類になります。
第3号被保険者がいる場合のみ必要となりますので、必須ではありません。
国民年金第3号被保険者資格取得届書は、「健康保険被扶養者届書」の書類に含まれています。
必要事項を記入し、添付書類(収入状況がわかるもの)を揃えたら、(申請が必要となった日から)14日以内に提出します。

・健康保険・厚生年金保険保険料口座振替納付申出書

健康保険・厚生年金保険保険料口座振替納付申出書は、保険料を口座振替で納付したい場合に提出する書類です。
書類は日本年金機構のホームページからダウンロードできます。

■忘れないように手続きしましょう

健康保険や厚生年金保険は、病気やケガ、退職後の生活などに備える保険制度です。
会社を設立したら、加入が義務づけられていますので、忘れないように手続きを済ませましょう。
書類の中には提出期限が限られているものもありますので、書類の作成は計画的に進めることが大切です。