厚生年金と国民年金って何が違うの?

こんにちは。

Lib税理士事務所、代表の上田洋平です。

今回のお役立ちブログのテーマは、「厚生年金と国民年金の違い」についてご紹介します。

■誰もが加入する国民年金と二階建ての厚生年金

自分は自営業や無職だから国民年金しかないという人がいる一方、自分は会社勤めだから厚生年金加入で国民年金には加入していないという人もいます。
ですが、正確に言うと、20歳以上の国民はすべて国民年金に加入します。
厚生年金は企業に勤務する、いわゆるサラリーマンが加入する年金ですが、国民年金の上乗せをするための年金です。
厚生年金に入っているということは、国民年金にプラスされるということで、2階建て年金と呼ばれることもあります。
国民年金の保険料は国によって定められ、市区町村が窓口となって請求を行っていますが、厚生年金は給与が基準となって保険料が定められ、毎月の給与やボーナスから天引きされる仕組みです。
この際、厚生年金保険料を支払うことで、国民年金の保険料も支払っていることになっています。
将来、老齢年金を貰う際には国民基礎年金にプラスして厚生年金も受け取れます。
そのため、厚生年金は2階建ての年金と言われるのです。
厚生年金は18歳から入ることができ、会社で働く年数が長くなるほど、給料が多くなるほど保険料の納付額が増えるので、老後に得られる年金額も多くなります。
途中でサラリーマンを辞めて自営業者などになっても、勤務して厚生年金保険料を支払った期間分は上乗せが受け取れるのです。

■保険料の支払いについて

国民年金は20歳になると全国民が加入します。
老後の年金はあてにならないらしい、保険料を払いたくないから、自分は加入しない、加入していないという方がいます。
ですが、正しくは、加入していないのではなく、加入はしているけれど、保険料を支払っていない未納の状態ということです。
老後の年金は保険料を支払った期間が10年以上ないと貰えないため、本当に未納のままで良いのかよく検討することが必要です。
ずっと未納を続ければ、老後の年金はもちろん貰えませんが、万が一、障害を負って働くことができなくなったり、一生、寝たきりになったり、車いすでの不自由な生活を送らなくてはならないといった事態が生じた場合に、障害年金が貰えなくなるため、注意しなくてはなりません。
国民年金というと老後の年金ばかりがイメージされますが、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の3種類を兼ねています。
1つの保険料の支払いで老後を迎える前に障害を負ってしまった場合や家族が亡くなり、一定の条件を満たす場合、そして、老後を迎えたときにも年金を貰うことができるのです。
20歳を迎えた段階で、まだ学生であり、働いていないし、自分で保険料を払うのは辛いというときには学生納付特例制度の利用をおすすめします。
学生納付特例制度を申請すれば、保険料を支払っていなくても、万が一の際には障害基礎年金が受け取れるからです。
また、申請をせずに未納を続けても、老齢年金の受給資格期間を満たすことはできませんが、学生納付特例制度を申請して承認を受ければ、受給資格となる10年のカウントに特例期間中も入れてもらえます。
なお、老齢基礎年金の金額を増やしたい倍には、就職した後などに10年以内であれば、追納が可能です。
また、自営業者や失業をした方などで収入が少なく、保険料の納付が経済的に難しい方は、保険料免除制度や納付猶予制度を活用するのが安心です。
保険料の免除や納付猶予が承認されれば、その期間は年金の受給資格期間に算入されるだけでなく、免除期間は保険料を納めたときの2分の1(平成21年3月までの免除期間は3分の1)の年金額とし反映してもらえます。
なお、厚生年金の保険料は給与天引きであり、猶予や免除の制度はありません。
高卒で就職した場合、20歳になっていなくても、厚生年金保険料の支払いが発生します。
給与天引きなので、どんなに払いたくないと思っても拒否することはできません。
雇用主には正社員や一定の基準以上働いているパートやアルバイトを厚生年金に加入させる義務があるためです。
保険料は雇用主と各従業員で折半となりますので、自分が負担した以上の厚生年金額が期待できます。
これに対して、国民年金はあくまでも加入者の責任で支払う必要があり、コンビニ払いや金融機関からの振込、口座引き落としなどが選べます。

■遺族年金の違い

遺族年金の支払いには大きな違いがあり、基本的に国民年金しか加入していない自営業者などが亡くなった場合と厚生年金加入者が亡くなった場合では大きな差が出るのが特徴です。
国民年金では、たとえば、ご主人が亡くなった場合に、妻が遺族年金を受け取れるかは18歳になった年度の3月31日までの間にある子、簡単に言うと高校卒業までの子どもがいないと受け取ることができません。
又は、20歳未満で障害等級1級又は2級の障害状態にある子どもがいないと貰えません。
子どもがそもそもいないご家庭や大学生や社会人の場合には貰えないのです。
これに対して遺族厚生年金は亡くなったご主人に生計を維持されていれば、子どもの有無を問わず、妻は遺族厚生年金を受け取ることができます。
妻がいない場合には18歳になった年度の3月31日までの間にある子、20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の障害者が受け取ります。
妻も子もいない場合の父母、祖父母にも権利があるのも、国民年金とは大きく違う点です。
さらに妻が企業で働いていて厚生年金の加入者である場合には、55歳以上の夫も対象となっています。
なお、子のある配偶者又は子が遺族厚生年金を受け取れる場合には、遺族基礎年金もあわせて受けられるので、遺族年金も2階建てになります。
国民年金の加入者は高校生までの子どもがいるか否かで、一銭も遺族年金を貰えませんが、厚生年金加入者の家族には厚い保障が整っているのが大きな違いです。

■転職や離職を繰り返している方は注意しよう

老齢年金を受け取るには、10年以上にわたって保険料を納めるか、免除や猶予の制度を利用している必要があります。
かつては25年以上となっていたため、未納期間が多く老齢年金を受給できない人が多いことが問題となり、10年に短縮されました。
とはいえ、9年しか支払っていないと老齢年金は一銭も支給されません。
9年間支払った保険料は、いわば無駄になってしまうので注意が必要です。
転職や離職を繰り返した方や一定期間、働かずに過ごした経験がある方、フリーターなどで厚生年金の対象にならない方などは、受給期間の要件を満たせないリスクが高まるため、注意しなくてはなりません。
高卒や大卒で入社して以降、10年以上は会社勤めをしているという方は、給与天引きで保険料をしっかり払っているので、その後、自営業者になって国民年金保険料の未納を続けても、少なくとも10年分の老齢年金が2階建てで受け取れます。
定年まで勤務すれば、40年間の満額の老齢基礎年金に加えて、勤務した期間の給与額に応じた老齢厚生年金が上乗せされます。
これに対して、20歳から60歳までの40年間、自営業者やフリーランスとして国民年金保険料を支払い続けた場合は、満額の老齢基礎年金だけとなり、厚生年金による上乗せはありません。
そのため、国民年金のみに加入してきた方や国民年金のみの加入期間が長い方は老齢基礎年金だけに頼らず、貯金をするなど、そのほかの自助努力がないと十分な老後資金が得られない場合があるので注意しましょう。