中小企業の助けとなる小規模企業共済

こんにちは。

Lib税理士事務所、代表の上田洋平です。

今回のお役立ちブログのテーマは、「中小企業の助けとなる小規模企業共済」についてご紹介します。

■小規模企業共済の目的と歴史

小規模企業共済は昭和40年に誕生した制度です。
当時はまだ社会保障が十分ではなかったため、その不備補充のために発足され、小規模事業者の廃業時の生活安定や事業再建を目的に創設されました。
小規模企業の経営者や個人事業主は大手企業の従業員に比べて社会保険や労働保険など各種制度の恩恵を受けることが難しい状況であったため、社会保障政策の不備を補充する機能を果たしてきたのです。
また、廃業せざるを得なくなった際や退職の必要が生じた際に、その後の生活を安定させることや事業の再建が目指せるようにとの目的もあります。
小規模企業共済を通じて小規模企業の健全な発達を促し、従業員の生活が大手企業の従業員の生活と均衡できるようにする趣旨で創設された制度です。
その後、社会環境の変化や法制度の整備、経済環境の変化や時代の要請に合わせて改革されながら、現在では以下のような制度になっています。

■将来の備えと同時に節税対策ができる

小規模企業共済は小規模企業の経営者や役員が、廃業や退職時の生活資金などのために積み立てる共済制度であり、国の機関である独立行政法人・中小企業基盤整備機構によって運営されています。
そのため、小規模企業の経営者掛金は全額を所得控除することが認められます。
将来に備えつつ、高い節税効果が発揮されるのがメリットです。
毎年の税金を抑えながら、万が一の際に共済金が得られるので、企業成長をさせながら安心も得られます。
小規模企業共済は掛金が全額所得控除できるなどの税制メリットに加え、事業資金の借入制度も用意されており、お得なうえに安心できる小規模企業の経営者のための退職金制度として活用できます。

■加入ができる対象者

小規模企業共済に加入できるのは、以下の6つのいずれかにあたる方です。
第一に建設業、製造業、運輸業、宿泊業・娯楽業、不動産業、農業の場合、常時使用する従業員の数が20人以下の会社の役員又は個人事業主であることが必要です。
第二に卸売業・小売業、宿泊業・娯楽業以外のサービス業では、常時使用する従業員の数が5人以下の会社の役員又は個人事業主が加入できます。
第三に事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、又は常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員も加入可能です。
第四に常時使用する従業員の数が20人以下で、農業の経営を主として行う農事組合法人の役員も加入対象です。
第五に常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人など士業法人の社員も加入できます。
第六に個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者、ただし、個人事業主1人につき2人までも加入が可能です。

小規模企業共済への加入手続は、中小企業基盤整備機構が業務委託契約を結んでいる金融機関又は団体の窓口にて行うことが必要です。
申込日から約40日後に小規模企業共済手帳と小規模企業共済制度加入者のしおり及び約款が中小企業基盤整備機構より郵送されてきます。
なお、審査の結果、加入資格に該当せず加入ができない場合には、約2ヶ月後に中小企業基盤整備機構から通知が届きます。

■増減額もできて全額が所得控除にできるお得な掛金

月々の掛金は1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定ができます。
加入後も増額したり、減額したりを柔軟に設定できるのも魅力です。
経営状態が良く、利益が出て節税をしたいときには増額することができます。
一方で経営が低迷した場合や費用をほかの部分に回したいときには減額をすることが可能です。
税務申告をする際には全額を課税対象所得から控除できるので、節税対策にも役立ちます。
たとえば、毎月5万円を掛ければ、年間60万円を控除できるのです。
掛金の納付方法は月払い、半年払い、年払いから選択でき、預金口座からの振替によって払い込みます。
振替日は毎月18日(18日が休日の場合は翌営業日)です。

■共済金の受け取りは一括でも分割でもOK

掛けた掛金をもとに支払われる共済金は、受け取れる条件としていくつか種類があります。
満期や満額という概念はないので、加入期間中は長期的に掛けていくことができます。
たとえば、小規模企業の役員の場合、以下のような事由で共済金の受け取りが可能です。
共済金Aは企業が解散することになった場合に受け取れます。
共済金Bは病気、ケガの理由によって役員を退任した場合や65歳以上で役員を退任した場合、死亡した場合のほか、180ヶ月以上掛金を払い込んでいる場合には65歳以上になった際に老齢給付として受け取ることも可能です。
準共済金は企業の解散や病気、ケガ以外の理由で役員を退任した場合、65歳未満で役員を退任した場合に受け取れます。
また、任意解約の場合は解約手当金が支払われます。
共済金の受け取りは一括又は分割払いのほか、一括と分割の併用受け取りも可能です。
一括受取の場合は税法上は退職所得の扱いとなり、分割受取の場合は公的年金等の雑所得扱いとなりますので、いずれも所得税の軽減ができるメリットがあります。

■低金利の貸付制度

小規模企業共済に加入している契約者は、掛金の範囲内で貸付制度を利用できます。
8つの種類があり、いずれも低金利で、即日貸付も受けられるのが大きなメリットです。
一般貸付は資金繰りなどに困ったときなどに、迅速に事業資金を借りられる便利な制度です。
掛金納付月数により掛金の7~9割の範囲で、10万円以上2,000万円以内、5万円単位で年1.5%にて借り入れできます。
以下の7つは、いずれも掛金納付月数により掛金の7割~9割の範囲内で、50万円以上1,000万円以内、5万円単位で年0.9%という低利で融資が受けられるのが便利です。
まず、緊急経営安定貸付は、経済環境の変化などによって一時的な売上の減少が発生し、資金繰りが著しく困難となった際に経営の安定を図るために事業資金を借りることができます。
傷病災害時貸付は疾病又は負傷して一定期間入院したり、災害救助法の適用された災害などに遭ったり、火災、落雷、台風、暴風雨などの一般災害で被害を受けた場合に、経営の安定を図るために事業資金を借りることが可能です。
福祉対応貸付は共済契約者又は同居する親族の福祉向上を図る目的で、必要となる住宅改造資金や福祉機器購入などに充てる資金を借りられます。
創業転業時貸付は掛金納付月数通算制度を活用し、新規開業や転業後に共済契約を再び締結する意思を有する方に対し、新規開業・転業を行う際に事業資金を融資する制度です。
新規事業展開等貸付は共済契約者が事業を多角化したい際や共済契約者の後継者が新規開業を始め、事業多角化を図るために資金を融資します。
事業承継貸付は事業承継のための事業用資産又は株式等の取得に必要となる資金を借りることができます。
廃業準備貸付は個人事業の廃止又は企業の解散を円滑に行うことができるよう、設備の処分費用や事業債務の清算に関する費用など、廃業の準備のために必要となる資金を借りることが可能です。

■利用の状況

小規模企業共済の加入者数は平成30年3月末現在で約138.1万人、資産運用残高は約9兆4,125億円に上っています。
平成29年度の受給状況は共済金受給額が約4,838億円で、共済金受給者の平均在籍年数は約19年で、共済金受給額の平均額は1,087万円です。