うちも社会保険の加入が必要?加入が義務づけられている会社とは

こんにちは。

Lib税理士事務所、代表の上田洋平です。

今回のお役立ちブログのテーマは、「社会保険に加入しなければいけない会社」についてご紹介します。

■会社の形態によって加入の必要性がわかる

会社を設立し、事業を始める際、社会保険の加入が課題として持ち上がる事業主も多いのではないでしょうか。
従業員を雇わず、社長1人でも加入する必要はあるのかなど、加入するかどうか判断がつかない場合もありますが、加入が必要かどうかは、会社の形態によって決まります。
ここでは社会保険に加入しなければならない会社について、わかりやすく解説します。

■社会保険に加入が必要な会社とは

社会保険は、会社設立時に加入することが、法律によって義務づけられています。
たとえ従業員のいない社長1人の会社でも、給与が支払われる以上、社会保険に加入する必要があるのです。
といっても、すべての会社が必ず社会保険に加入する必要があるのかというとそうではなく、加入義務のある会社が対象になります。
健康保険法では、社会保険に加入義務のある会社を「強制適用事務所」と定めているのです。
強制適用事務所には株式会社・合同会社・有限会社・一般社団法人などがあります。
いずれかの会社形態に分類される場合は、従業員の人数にかかわらず、社会保険に加入することが必要です。
NPO法人は、非営利団体ですが、法人とみなされるため、社会保険に加入しなくてはなりません。
常時従業員が5人以上働いている個人事務所も、強制適用事務所に分類されます。
会社を設立したばかりでコストを抑えたいからといって、社会保険に加入しないというのは、違法行為にあたりますので気を付けましょう(ただし、社員が社長1人で、役員報酬がゼロという場合は、加入する必要はありません)。
「個人事務所」の場合は、「法人」と異なる点があります。
常時5人以上働いている個人事務所は、原則として社会保険の加入義務が生じるのです。
ですが、飲食業や宿泊業、サービス業(銭湯)・税理士事務所・法律事務所・農林水産業など、中には加入義務のない業種もあります。

・従業員常時5人以下の事務所は任意

従業員が常時5人以下の事務所は、社会保険の加入義務は生じず、任意加入となります。
もし半数以上の従業員が加入を望んだ場合、その事務所は社会保険に加入可能です。
その場合、従業員が社会保険に加入できますが、事業主は社会保険に加入できません。
つまり事業主は、国民健康保険に加入し続けることになります。

・社会保険加入が義務づけられていない団体

「法人」という名の付く団体は、営利・非営利にかかわらず、社会保険の加入義務が生じますが、例外もあります。
それは宗教法人と呼ばれる団体で、宗教活動は「労働」とはみなされないというのが、例外に位置づけられる理由になるのです。
宗教法人で従業員として働き、給与を貰っていたとしても、宗教活動そのものが「労働」ではありませんので、社会保険に加入する必要はないとされています。

■社会保険について

社会保険とは、失業や病気、退職後の生活の保障などを目的とした保険の総称を言います。
会社が加入する主な社会保険には、「健康保険」「厚生年金」「労災保険」「雇用保険」があります。

・健康保険

健康保険は、病気やケガの治療にかかる医療費の負担を軽減する医療保険です。
健康保険に加入していると、医療費が3割負担になるほか、出産の一時金支給などが受けられます。
がんの治療や長期入院など、治療費が高額になる場合、支払いが自己負担限度額を超えない「限度額適用認定証」も、健康保険制度の一つです。

・厚生年金

厚生年金とは、公的年金の一つで、満20歳から60歳までの日本国民が加入しています。
退職後一定の生活水準を維持することを目標とし、通常65歳になると支給されます。

・労災保険

仕事中や通勤途中で病気やケガをした場合に、決められた保険金が支払われる制度です。
労災が原因で本人が亡くなった場合、保険金は遺族に支払われます。
給付金額は、病気やケガの程度によって異なり、一時金又は年金などいくつかの給付方法があります。

・雇用保険

雇用保険は、失業中の生活を支援することや教育訓練など、再就職につながるスキルの取得をサポートすることを目的とした保険制度です。
失業中に支給される給付額は、勤続年数や給与額などから算出されます。
給付期間は退職理由によって異なりますが、次の就職が決まるまでの生活を支えるうえで、重要な役割を果たします。
雇用保険には、失業し再就職した際に支給される「就職促進給付」や特定の教育訓練を修了した際に支給される「教育訓練給付金」などがあります。

■社会保険の加入方法

社会保険に加入する方法は、社会保険の種類によって異なります。
中には提出期限が決められている届け出もありますので、事前にどんな種類の届け出があるのか把握し、提出が遅れないように注意しましょう。

・健康保険と厚生年金

健康保険と厚生年金は、会社を設立してから5日以内に加入することが義務づけられています。
初めて健康保険と厚生年金に加入する場合は「健康保険・厚生年金保険新規適用届」が必要になります。
届け出に必要な書類は、申請書(日本年金機構のホームページからダウンロード可能です)のほか「適用届」と、90日以内に発行された「登記簿謄本(原本)」です。
もし会社の住所と、登記した住所が異なる場合は、賃貸借契約書(コピー)など、会社の住所を確認できる書類も準備しましょう。
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」は、新しく人を雇ったときに必要な届け出です。
保険に加入する人(役員や従業員など)全員の分を提出します。
場合によっては添付書類が必要になることもあります。
従業員に扶養家族がいる場合、「健康保険被扶養者(異動)届」が必要です。
提出の際、被扶養者の「健康保険被保険者証を被扶養者届」を添付します。
扶養者の年間所得が103万円以上130万円未満という場合は、「課税(非課税)証明書」も、一緒に提出することを忘れないようにしましょう。
健康保険と厚生年金の提出は、管轄の年金事務所窓口に持ち込む、オンライン申請、郵送するという方法があります。

・労災保険

労災保険の申請は、管轄の労働基準監督署に必要書類を提出します。
会社を設立し従業員を雇ったら、10日以内に「保険関係成立届」を出す必要があります。
届け出に必要になるのは、申請書のほか労働者名簿や出勤簿などです。
もし従業員が10名以上になる場合、「就業規則届」も一緒に提出します。
「労働保険概算保険料申告書」は、保険関係が成立した後、又は保険関係成立届とともに届け出て、さらに50日以内に納付を済ませます。

・雇用保険

雇用保険もほかの保険と同様に、従業員を雇った時点で加入する社会保険です。
加入の際に提出する書類は、2種類あり、どちらも管轄の公共職業安定所に提出します。
申請書は、公共職業安定所のホームページからダウンロードできます。
書類の提出は、公共職業安定所の窓口又はオンラインで済ませましょう。
「雇用保険適用事業所設置届」は、従業員を雇用した翌日から10日以内に届け出が必要な書類です。
もし従業員を会社設立と同時に雇用する場合は、会社設立日の翌日から10日以内に提出します。
提出には「登記簿謄本(原本)」が必要です。
「雇用保険被保険者資格取得届」も、新たに従業員を雇用した翌日から10日以内に提出することが義務づけられています。
従業員が複数いる場合は、従業員と同じ人数分を届け出ます。
雇用保険被保険者資格取得届を届ける際、労働者名簿や賃金台帳の提出を求められることもありますので、事前に準備しておくと良いでしょう。

■加入してそのコストも考えましょう

社会保険は、会社にとって不可欠な制度です。
小規模な個人事務所でない限り、法人を設立したら社会保険に加入しなくてはならない、と考えたほうが良いでしょう。
法人でも加入義務のないケースもありますが、社会保険は何かあったときの備えになります。
未加入のままでいると、不測の事態に対応できず、大きなトラブルに見舞われるリスクが高まります。
会社設立を計画しているなら、社会保険に必要なコストの計算も忘れないようにしましょう。