こんにちは。
Lib税理士事務所、代表の上田洋平です。
今回のお役立ちブログのテーマは、「決算日を決めるときのポイント」についてご紹介します。
■会社の決算日は自由に決めてOK
会社設立のためにさまざまなことを決めていく中で、決算日についても決めなければならないことに気付くでしょう。
決算日は事業年度の区切りであり、最終月は決算月と言いますが、多くの人が決算月は3月か12月でなければならないと認識しているのではないでしょうか。
実際そうした月に決めている会社も多いのですが、実は決算日はいつにしてもまったくの問題ありません。
会社の都合でいつでも好きな月、好きな日に決めることができるのです。
ただ決め方によっては節税面でチャンスを逃すこともありますし、会社の運営上、あとあと苦労をするのも困ります。
やはり好き勝手に決めてしまうのは得策ではありません。
これが法人ではなく個人事業主として事業を行う場合は、暦年課税のため毎年1月1日から12月31日と会計期間が法律で定められています。
毎年確定申告の日付が発表されますが、個人事業主は前年度分を翌年の2月中旬から3月15日頃までに税務署に申告し、所得税を納付しなければならないと決まっているのです。
法人は法律で定められた期間がなく、会社設立日から1年以内の好きな日に決算日を決めることができます。
設立日からまる1年で決算することも可能ですし、決算日は必ずしも月末日でなくても構いませんので、月の中頃を決算日にすることも可能なのです。
ただ、決算の処理は面倒で手間もかかるため、月中の中途半端な日付にすると会社の運営上面倒な場合も少なくないでしょう。
ほとんどの会社はいずれかの月の末日に設定していますし、やはりそれがおすすめです。
このように会社運営を考えたうえでもどのように決算日を決めれば良いか、ここでまとめておきましょう。
■決算日を決めるときの5つのポイント
決算日をいつにするか決めるとき、意識したほうが良いポイントは以下の5つです。
・繁忙期
・節税
・キャッシュフロー
・免税期間
・取引先
それではそれぞれを詳しく見ていきましょう。
・繫忙期
決算の処理は手間がかかり、時間も労力も必要とされます。
これを繫忙期に設定すると大変な業務量となりますし、せっかく収益が上げられる期待のあるときに、わざわざ締め作業を行う必然性がありません。
そのため繫忙期は避けるのが一般的で、これはメインとなる事業によっても各社マチマチとなるため、自社の事業をしっかり考えてシミュレーションする必要があります。
決算の作業では、棚卸や年間収益、年間支出の計算作業が発生します。
また、税務申告は事業年度終了から原則2ヶ月以内にせよという法律がありますので、決算作業が終了してもその後2ヶ月間は時間的余裕が欲しいところです。
もし決算申告が間に合わなかった場合、正当な理由がなければ青色申告が無効になります。
附帯税が課される場合もあるため、1年のうちで一番業務量が少なくなりそうな月に設定し、間違いも遅れも出ないように備えるのが一番です。
・節税
節税を意識するという意味は、売上の多い月を避け、余裕を持って対策を考えられるようにしておくという意味です。
売上が最も多い月に決算すると、大きな利益が出たときに節税対策ができないまま高い税金を支払うことになります。
前項の繫忙期を避けるということにもつながるのですが、それよりももっと長い目で見て、福利厚生や消耗品の購入、設備投資や決算賞与の支給などから納税金額を妥当にする余裕を持つ必要があります。
たとえば売上原価は「期首在庫+当期仕入高-期末在庫」で計算されますので、期末在庫にあたる発注量をどれくらいにするか計算する余裕もほしいところでしょう。
繫忙期に当初計画の売上が確保できなかった場合、決算までの残り期間で計画修正をしたり、対策をしたりすることで事業内容を整えることもできますので、節税対策のみならず黒字化対策でも期間は重要です。
・キャッシュフロー
キャッシュフロー、資金繰りの意識は常に必須ですが、特に黒字決算時には考慮しなければ法人税等が大きな支出になります。
もし車両を何台も所有しているなら5月に生じる自動車税も重要ですし、不動産をたくさん所有しているなら5月以降に生じる固定資産税も重要です。
これらの月に一気にキャッシュアウトすると、メインの事業とは関係ないことでキャッシュフローが悪化するおそれがあります。
資金流出が多いことが予測される月があるなら、2ヶ月前に決算日を設定するのはかなりリスクが高いと認識しましょう。
従業員をたくさん雇用しているなら、一般的に設定されやすい7月と12月のボーナス時期、7月と1月の源泉徴収税の特例納付月も資金流出が予測される月です。
自社のキャッシュフローの状態をしっかり考慮し、影響のない月に決算日を決めることは重要です。
・免税期間
これは消費税に関する事項です。
消費税は原則、前々事業年度の課税売上高が基準となります。
新規設立会社は当然、前々事業年度はありませんので、設立後2期目まで納税義務が免除となります。
この限りではないのは資本金か出資金が1,000万円以上の法人もしくは特定新規設立法人ですが、一般的な会社であればほぼ免除される猶予があると考えて良いでしょう。
勘違いしてはいけないのが、2年間ではなく2期間だということです。
つまり、4月に会社を設立し、10月に決算日を持ってきたら免税期間は1年7ヶ月に短縮してしまいます。
免税期間をフル活用したいなら、事業年度期間を12ヶ月に設定するのが最も得ですので、前例であれば3月決算にしたほうが有利だということがわかるでしょう。
・取引先
事業は1社だけで行えるものではありませんので、取引先との連携が必須です。
特に設立したばかりの会社は大手企業や官公庁から発注を受けるケースも多いため、予算を組みやすくするため取引先に決算期を合わせることも多くなっています。
国や地方公共団体など公的機関は決算期を3月にしていますので、そうした先から発注を受けやすい大手大企業もそれにならい、大手企業から受注する多くの中小企業もそれにならうというのが日本の商慣習です。
特に都合がないなら、取引先と同じにしようと判断するのも妥当でしょう。
ただ近年、こうした商慣習から抜け出し、12月決算に変更する企業が急増しました。
その理由は国際財務報告基準で、簡単に言えば日本の企業がグローバル化したことを意味します。
国際財務報告基準はIFRSと言いますが、その規定により従前親会社と決算期がずれていると、親会社の決算時期で仮決算しなければならなくなり非常に手間がかかります。
こうしたことから子会社が親会社に合わせて決算期を変更する事例が多発しており、日本でも国際基準の12月決算を選択する企業が急増しているのです。
■決算日は熟考を~変更は可能でもデメリットあり
会社の決算日を決めるときにはこうしたポイントを意識する必要がありますが、場合によっては運営を始めてから状況が一変することもあるでしょう。
決めたらもう変更できないわけでもなく、前述の通り途中で変えることは可能です。
株式会社では株主総会を開き、そこで決議すれば定款を変更して管轄の税務署と都道府県税事務所に異動届出書を提出すれば問題ありません。
会社設立時とは異なり公証役場における定款の認証は不要ですし、事業年度は登記事項でもないので登記の変更も不要です。
ただ、決算期の変更は事業年度が1年未満になることを意味しますので、各制度の適用期間が短くなるデメリットがあります。
特別に月割計算する手間なども発生しますし、その年度は正確な前期比較ができにくくなるのもマイナスです。
法人税の納税額にも深く関わりますし、税制優遇制度で不利が生じることもあるため、決算期の決定や変更時には税理士に相談するのが安全策でしょう。
いずれにせよ、何度もコロコロ変えるようなものではありません。
会社設立時に中長期の事業計画をしっかり考慮し、最善の選択をしてください。