こんにちは。
Lib税理士事務所、代表の上田洋平です。
今回のお役立ちブログのテーマは、「社会保険へ加入しなければならない人とは」についてご紹介します。
■社会保険はアルバイトやパートにも必要!
会社経営を始めるにあたり、社会保険の理解は非常に重要な項目です。
人手不足のためアルバイトを雇用して戦力を確保する会社が多いですが、もし「アルバイトなら社会保険が必要ないから楽だ」と考えているなら大間違いです。
社会保険に加入しなければならない条件はいくつかありますが、経営者や人事担当者になるなら必ず理解しておきましょう。
一定の条件を満たす従業員は、パートでもアルバイトでも関係なく、社会保険の加入が義務づけられています。
特に平成28年10月に適用範囲が拡大し、それまでは社会保険適用対象外だった労働者が適用されるケースが出てきました。
会社経営を行う以上、社会保険の加入条件や加入義務、手続きに関しては常に最新の情報を得ておく必要があります。
これは法律で定められていることですので、違反すれば当然罰則があります。
会社を守るためにはたとえアルバイトといえど人員を雇用するなら正しい理解が必須ですので、ここで改めて見直しておきましょう。
■そもそも社会保険への加入が義務づけられる事務所とは?
社会保険へ強制的に加入が義務づけられる事務所は、「強制適用事業所」と呼ばれます。
該当する事務所は、事業主や従業員がたとえどう思おうとも、健康保険や厚生年金保険などの社会保険へ加入しなければなりません。
加入手続を取らないと法律で罰せられることになりますので、注意が必要です。
適用対象となる事業所の条件は以下の通りです。
・事業主を含み、従業員が1人以上の法人
・常時使用する従業員が5人以上いる個人事業所
一定規模の事業所であれば大半が強制適用事業所に該当しますが、たとえば店主1人だけで経営している理美容店の個人事業所などは該当しません。
ただ該当しない事務所でも、一定の要件を満たして加入申請すれば社会保険が適用されますので、事業所が任意で加入できるという意味で「任意適用事業所」と呼ばれます。
■条件に該当すれば雇用形態にかかわらず義務が生じる
肝心なのは、事務所に社会保険への加入義務が生じる場合、パートやアルバイトといった雇用形態にも関係なく加入しなければならない条件が発生することです。
その条件は以下の通りです。
・1週の所定労働時間、及び1ヶ月の所定労働日数が、同じような業務をしている正社員の4分の3以上になる
・常時雇用している
たとえば、年末年始など一時的に忙しい期間だけスポットでアルバイトを雇う場合は該当しません。
1ヶ月未満の日雇いアルバイトや2ヶ月以内に期間を決めて雇用するアルバイトは加入義務がなく、その期間を1日でも超えたときにその日から加入が必要となります。
また、所在地が一定しない事業所のアルバイトや4ヶ月以内の季節的業務で雇用するアルバイトも該当せず、6ヶ月以内の臨時的事業の事業所における雇用も加入義務は発生しません。
ちなみに、常時501人以上を雇用する特定適用事業所では、また条件が変わってきます。
501人以上が働く会社では、アルバイトの所定労働時間や所定労働日数が正社員の4分の3未満でも、以下の条件に該当すれば社会保険に加入する義務が生じます。
・1週の所定労働時間が20時間以上
・1年以上雇用期間が見込まれる
・月額賃金が8.8万円以上(年収106万円以上)
■アルバイトであっても社会保険に加入させる法的義務がある
正直なところ、社会保険の負担額は会社にとってかなり大きなウエイトを占めます。
正社員分でも苦しいのにアルバイトまでと思うと、相当厳しく感じるのが経営者の本音でしょう。
アルバイトとしても給与から天引きされるのは痛いと感じることが多いですが、条件に該当する以上加入させなければなりませんし、法を犯すリスクのほうがよほど怖いことを理解しなければなりません。
日本年金機構は事業所が社会保険に正しく加入しているか定期的に調査を行い、万が一法に反する行為があれば、過去2年に遡って一括で保険料を請求します。
従業員にも多大な迷惑がかかり労務トラブルに発展するのは当然なので、そんなリスクを負うほうがよほど恐ろしいことです。
深刻な人手不足で猫の手も借りたい中、優秀な人材に長く勤めてもらいたいなら、きちんと社会保険に加入し、安定して働ける環境を明示するほうがメリットが大きいことは考えるまでもありません。
■いざ社会保険へ加入!手続きは何からすべきか?
それでは社会保険の加入条件に該当した場合、手続きはどのように行えば良いか解説します。
期限が定められているため、時間的猶予がないことも認識しておきましょう。
ステップ1:5日以内に年金事務所へ届け出
届け出は会社の所在地を管轄する年金事務所へ行います。
事実発生から5日以内に提出するよう義務づけられていますので、遅れのないよう速やかに手続きしましょう。
提出する書類は以下の3点+1点です。
・健康保険・厚生年金保険新規適用届
・被保険者資格取得届
・被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)
被保険者に扶養家族がいる場合に限り、以下の1点が必要です。
・保険料口座振替納付(変更)申出書
年金事務所でフォームを受け取ることができますが、必要書類は日本年金機構のホームページからもダウンロード可能なので、あらかじめ用意していくと便利です。
添付書類は基本的に必要ないので、会社側は加入者のマイナンバーと本人確認だけ徹底すれば良いのですが、事業所の形態によっては以下の添付書類が必要となる場合もあります。
・法人事業所の場合
法人の登記簿謄本(原本)
・事業主が国や地方公共団体の法人の場合
法人番号指定通知書等のコピー
・強制適用事業所に該当する個人事業所の場合
事業主世帯全員の住民票(原本)
事業所の賃貸契約書のコピー
・任意適用事業所の場合
任意適用申請書
従業員の任意適用同意書
事業主世帯全員の住民票(原本)
公租公課の領収証1年分
会社が健康保険組合にも加入しているなら、組合への手続きは別途必要となりますのでそこも注意しましょう。
ステップ2:ハローワークへ届け出
次に、会社の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)へ「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
これは翌月10日までとなっていますので、期限に注意しましょう。
ちなみに中途採用の場合は前職の雇用保険被保険者番号が必要なので、本人から確認が必要になります。
雇用保険取得の際にもマイナンバーが必要です。
労災保険はアルバイトごとの加入手続は必要なく、従業員を雇用した際に事業所として労働基準監督署に「概算保険料申告書」と合わせて提出すれば加入することになります。
労災保険は、たとえ1日のみの勤務アルバイトでも就業中のケガや病気であれば給付手続が必要となるため、甘く見ることはできません。
労災は反すると厳しく罰せられるため事業者は十分注意してください。
■条件が該当すれば雇用形態は関係なし
アルバイトでもパートでも、条件に該当すれば雇用主は社会保険へ加入させる義務が生じますし、たとえ本人が拒否しても雇用側は責任を追及され法的に罰せられてしまいますので注意が必要です。
うっかり漏れなどが起こらないよう、週と月の所定労働時間を正確に把握し、条件に該当する場合には速やかに加入手続を行いましょう。
結論からすれば、社会保険への加入は雇用形態には関係なく、条件に該当するかどうかで決まります。
アルバイトやパートは手軽な人員ではなく、人手不足の現状においてはとても重要な戦力ですし、必要な人員が安定して働ける環境を提示できることが、事業をスムーズに回す基本だと認識しましょう。