会社設立(事業目的の決め方)

こんにちは。

Lib税理士事務所、代表の上田洋平です。

今回ののお役立ちブログのテーマは、会社設立時における「事業目的の決め方」についてご紹介します。

■起業をするうえで重要となる事業目的

会社を設立するうえで重要となるのが、何をする会社なのかという事業目的をいかに定めるかです。
やりたいことがあるから起業するのだから、事業目的は明確ですでに決まっていると甘く考えてはいけません。
事業目的はどんな会社なのかを明らかにし、会社を経営するうえでの道しるべとなるだけでなく、行政から事業を行うにあたって必要となる許認可を受ける際や金融機関から融資を受ける際にも確認がなされる事項です。
定款に必ず定めなくてはならない絶対的記載事項でもあります。
定款は会社における憲法的な存在であり、会社を経営していくうえでの拠り所となるとともに、定款に記載していない事業を行うことはできません。
もし、後から別の事業も展開したいと考えた場合や経営環境が変わり、最初に定めた事業では経営が立ち行かなくなった場合などに新しい事業を始めたいという場合には定款変更を行って、定め直すことが必要です。
定款変更を行うには株主総会を開き、発行済議決権株式の総数の3分の2以上の特別決議を得なければならず、場合によっては決議が通らない可能性もあります。
特別決議が通った場合は変更した内容を法務局で変更の登記しなければならず、登録免許税などの費用が発生します。
そのため、目先のことだけを考えて設定するのではなく、将来のことまでしっかりと考えて定めないと事業のスムーズな運営ができなくなる場合や安定経営につながらなくなるほか、起業して成功するか否かまで左右する重要な事項といえるのです。

■資金調達のためにも事業目的は重要

会社の設立や事業運営にあたって金融機関からの融資を得る場合や国の機関や地方自治体などから助成金を得たいと考えている場合も、事業目的とそれに伴う事業計画が重要なカギを握ります。
この際、事業目的に具体性がない場合やバラバラな事業目的を羅列しすぎると、実態が掴めない会社と疑われて審査に通らないリスクや質問攻めに遭い、なかなか審査が通らないリスクがあるので注意しましょう。
定款に記載された事業目的は審査における判断材料の一つであり、事業目的の実現の可能性を明らかにするよう求められるケースが少なくありません。
事業目的が達成されそうにない、実現はできないだろうとみなされれば、融資をしても返済が困難として、審査に通らないので注意が必要です。

■事業目的は将来まで見据えて考える

事業目的はその会社が何を行う会社かを明確にするものです。
一つの事業に限らず、関連事業をはじめ、将来行うかもしれない事業や会社が軌道に乗れば展開したい事業などを定めても問題ありません。
すぐに行う事業だけでなく、将来予定している事業や行う可能性がある事業も記載が可能です。
いまの段階で具体的な計画がなくても問題はなく、事業目的に記載したから必ずやらなくてはならないという縛りもありません。
たとえば、飲食店の運営がいまやりたい事業目的として、一番に掲げたとします。
将来的にはテイクアウト販売もやりたい、配達サービスもやるかもしれない、ケータリングもするかもしれない、自慢の料理をオンラインショップでも売りたい、アルコールの提供だけでなくテイクアウトでお酒も売るかもしれないといった事業展開の可能性も含めて、事業目的に定めておくと、いざやりたいとなったときにスムーズです。
事業目的の最後には、魔法の一言を書いておきましょう。
それは、今すぐやる事業や将来やるかもしれない事業を掲げた後に、「前各号に付帯関連する一切の事業」という事業目的を定めることです。
付帯関連する一切の事業と定めることで、事業目的には直接掲げなかった事業であっても、付帯性や関連性があれば、実際に明記した事業の目的の範囲内として行うことが可能となります。

■許認可や届け出が必要な事業を確認

事業を行ううえでは許認可が必要な事業や届け出が必要な事業もあります。
たとえば、建設業や不動産業、産業廃棄物処理業、風俗業などの許可制度や飲食店や食料品販売、美容室などでも保健所に届け出をするなどが必要となります。
事業を行うにあたっては、その事業が許認可や届け出が必要になるか、どこに申請をするのか、どのような条件を満たせば認められるのかをしっかりとチェックしておくことが大切です。
もっとも、許認可や届け出を得れば事業ができると単純に考えてはいけません。
許認可や届け出をする前提として、定款にその事業に即した事業目的が書かれていないと審査にも通りません。
今すぐ始めたい事業を目的に記載するのはもちろんですが、経営が軌道に乗った段階で拡大したい許認可を必要とする事業があるなら、あらかじめ定めておくのがベストです。
後から追加しようとすれば定款変更が必要となり、株主総会での特別決議や変更登記をしなければならず、時間もコストもかかってしまいます。
たとえば、先の例でいえば、飲食店を開業するには保健所への届け出が必要です。
飲食店でアルコールを出す分には問題ありませんが、お客さんが気に入ったお酒を販売したい、おつまみセットのテイクアウトと一緒に缶ビールなどを売りたいと考えた場合には、税務署長から酒類小売業免許を受ける必要があります。
その際、事業目的に酒類販売と明記されていなければ、すぐに免許を得ることができません。
酒類小売業免許を得るには、店舗のレイアウトにも条件があり、飲食スペースと販売スペースを分けるなどの必要も生じます。
レイアウト変更については将来考えるとしても、少なくとも事業目的に書いておかないと、いざ始めたいと思うとき、免許の申請や取得に手間取ることになるので注意しましょう。

■事業目的は無制限に書いても良いのか

いざ、新しい事業を始めたいと考えたときや成長を遂げて事業の多角化を図りたいときに事業目的を定款に定めていないと定款変更が必要になるなど手間やコストがかかるなら、とにかく可能性がある事業や時代の変化や経済環境の変化に応じて取り組めそうな事業をあらかじめ定めておいたほうが安心と思うかもしれません。
社員数人程度でアパートの1室からスタートした小さなベンチャー企業が、いまではメガベンチャーとなり、IT事業をはじめ、金融サービスや保険サービス、不動産事業やレンタルサービス、買取サービス、写真スタジオサービス、旅行代理業やプロ野球チームやサッカーチームの運営まで、業種の垣根を越えて幅広く展開しているのを見ると、いつかはそんな大きな企業になりたいと、あらゆる事業を定めておこうなどと、やる気をみなぎらせる方もいるかもしれません。
ですが、最初の段階での欲張りすぎはNGです。
会社の設立時には会社への信用を獲得し、金融機関からの融資を受けたり、地方自治体などから助成金を得たり、取引先を獲得していく必要があります。
その際に、あまりに多くの事業目的が記載されていると、いったい何をしたいのかと不安に思われる場合や現在の資金力や人数でこんなことができるはずがないと計画のなさなどを不安視されかねません。
会社設立時にはメインの事業と、そこから派生するような事業、経済環境の変化などによりメインの事業に陰りがさしたときにフォローができる事業などを5〜10個ほどにとどめておくのがい良いでしょう。
事業内容が多岐にわたる大手商社や巨大成長したメガベンチャークラスになれば、20〜30個の事業目的が普通に記載されています。
もっとも、メガベンチャーは最初からそうだったわけではなく、成長に伴い、定款変更を経てプラスしていったケースがほとんどです。
会社設立時は欲張りすぎず、かつ、将来を見据えて余裕を持って定めておくことがおすすめです。